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   新潮文庫  590円+税
   1987年2月25日 第1刷
   2018年3月10日 第70刷発行

 古書にて258円で入手。70刷とはすごい。
 「用心棒日月抄」シリーズの3作目。
 東北の小藩を諸般の事情で脱藩し、江戸で浪人暮らしをする青江又八郎と、その周辺の人物を描いた時代小説で、藤沢周平の作風に変化が現れた1970年代後半から「小説新潮」に連載が開始され、1991年まで続編が続けて執筆される代表作となっています。

 前作では連判状を取り戻し、藩の政争に区切りがつくかと思われましたがそれも束の間のことで、この物語の悪玉である旧大富家老派の真の首魁は藩主の叔父にあたる寿庵保方であることが判明します。その寿庵保方は、藩士を守るために陰で活動する江戸の嗅足組を壊滅させるため、5人の刺客を江戸に送ります。
 佐知の父親であり、嗅足組の陰の頭領である谷口権七郎は、佐知と旧知の仲である青江又八郎に、江戸嗅足組の擁護の密命を与えます。それは公にできない使命であるため、青江は3度目の脱藩をして江戸に向かい、使命の傍ら、板についてきた用心棒稼業で生活費を得ることになります。

 著者は単行本「刺客」にあるあとがきで、「刺客」後の後日談の構想を述べながらも、「多分書かれることのない物語」と表現しているとのことです。しかし、この文庫本の「解説」で常盤新平も、藤沢文学の読みどころは男と女の哀切な関係であり、用心棒シリーズに登場する佐知に惹かれ、彼女のことをもっと知りたいので、この続きをもっと読みたいと記していて、それは藤沢小説愛読者の総意でもあるでしょう。

 そんな要望に応えてか、1991年に第4作の「凶刃」が発表されます。これはそれまでの3作品とは趣きが異なり長編小説の形になっているようです。いずれこれも読むことにして、それまで楽しみにしていましょう。
(2019.12.23 読)

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