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   光文社  1,700円+税
   2018年7月30日 第1刷発行

 鋭い直感と優れた決断力に定評がある、美人だが強気でとっつきにくい弁護士・阿礼沙英子。沖縄独特の方言や因習、ウチナーンチュのささやかな嘘や隠し事などにやや苦戦中です。そんな彼女を、オジィオバァとすぐ仲良くなる天然気質をもつ方言通訳担当の事務員・大城が、意外な人脈と行動力によって縺れたトラブルを解く手がかりを見つけ出します。
 沖縄の料理と酒と照りつける太陽に彩られた、庶民感覚のリーガルミステリー!

 「さえこ照ラス」シリーズは、文庫で読んだ「さえこ照ラス」(2018)に次いで2冊目。ウチナーグチや大衆食堂の沖縄そばなど沖縄モノが随所に登場するので、沖縄フリークにとってはあらずじよりもそちらのほうに気が行ってしまいます。
 そのウチナーグチは、いったんきちんとひらがな表記のウチナーグチで書いておき、それらをほぼすべて一般の口語表記で書き直すという、小説として読むには一見煩わしいことをやっています。しかし、ヤマトンチュにはやはりこれがなければ意味がクリアにならないだろうし、かといって一般表記だけでは沖縄のまったり感を表現することは難しいでしょう。やはり方言、地域語というのは独特の味があり、組踊やウチナー芝居、島唄などもそうで、ウチナーグチでしか表現できないことは多くありそうです。

 「チャクシとユミの離婚相談」「飲酒運転の刑事弁護」「沙英子の長期休暇」「トートーメの継承問題」「生活保護受給者の借金問題」「離島の刑事弁護事案」「沖縄すば屋の相続問題」の全7篇。今回の舞台はいつもの名護周辺だけでなく、八重山や宮古島にも飛んでいます。
 その点について著者本人がレビューした文章を見つけたので、以下に引用しておきます。

・サトウキビ畑をタクシーで  友井羊(作家)
 沖縄を舞台にした法律エンタメ「さえこ照ラス」の続編を作るにあたり、一作目で出せなかった沖縄本島以外も舞台にしたいと思った。宮古島や八重山諸島などは沖縄本島と地理上でも距離があり、文化的に大きく異なる点が多い。そのため一作目とは違った物語が描けると考えたのだ。
 八重山諸島は訪れたことがあった。植生の違いや太陽光の鋭さ、方言の違いなど興味深い点は無数にある。食事なら本場の石垣牛は絶品だったし、キーツマンゴーは沖縄本島ではあまり食べることができず、なおかつ食感が最高なのだった。
 しかし宮古島は未訪問だった。一度足を運ばなければ現地の様子は書けないと思っていたら、ありがたいことに担当編集者と一緒に取材に行けることになった。成果が得られるか緊張しながら挑んだが、結果的には大豊作だった。
 まず、初日に貸し切りで宮古島観光をお願いしたタクシー運転手が大当たりだった。軽快なトークと地元に関する深い知識によって、必要最低限の情報は初日で全て得られたと言っても過言ではない。
 さらに運転手はパーントゥという祭で重要な役割を果たすンマリガーにも案内してくれた。その時の生の情報は鮮烈に印象に残っている。実際に五感で体感しなければ、作中におけるパーントゥの描写はリアリティに欠けていたはずだ。
 他にも取材での体験は数知れない。後に編集者から「本当にやるとは思いませんでした」と言われた自転車での宮古島縦断も雰囲気を味わうには最高だった。一面の青空と照りつける太陽の下に続くサトウキビ畑と広大な牧場は今でも記憶に焼きついている。
 本作「沖縄オバァの小さな偽証」は取材の体験を存分に盛り込んだ。沖縄の魅力と空気感、そして土地に生きる人たちの息遣いが、少しでも読者に伝わればとても嬉しい。

(2020.2.21 読)

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