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   集英社文庫  660円+税
   2020年5月25日 第1刷発行

 父がいた。母がいた。きょうだいがいた。
 大家族で過ごした幼少期の思い出。明るくも胸をうつシーナ的私小説。(コシマキから)

 戦後の気配がまだ色濃い時代、千葉の幕張に引っ越してきた大家族の椎名家。小さな生き物が息づく干潟が広がる土地で「ぼく」は小学生になった。豊かな自然のなかを飛びまわり、家には4人のきょうだいたちがいて食卓はいつも賑やかだった。そんな当たり前の幸せな毎日だけど、我が家にはフクザツな事情が隠されていて……記憶をたどりながら、あたたかくも脆い「家族」の風景を綴ったシーナ的私小説。(カバー背表紙から)

 「岳物語」から始まったシーナの家族小説。その後「じいじ」となって「三匹のかいじゅう」「孫物語」などで孫たちの物語を書いていましたが、今度は自身の幼稚園生から小学校高学年までの体験をもとに綴ったのが当著。2017年7月が初出です。

 「椎名誠 旅する文学館」のページでシーナは、「自分自身の子供時代、父や母、そして家族はどんな状態だったのかという、思えば私小説で最も初めに書くようなテーマのものを大分たってから書き出したのが「家族のあしあと」だった」とし、以下のように自著を語っています。
 ぼくがかなり早い時期に書きだした小説は日本文学の伝統とよくいわれるような“私小説”だった。書いたのは30代の終わりの頃で、モノカキになってまだ4、5年だったから、それが私小説であるかなどと考えもせずに締め切りに追われて瞬間的に題材に困っていると、目の前でちょうどいい小説的素材が動きまわっていた。泥だらけになっているぼくの息子、岳くんである。そこで始まったのが「岳物語」だった。単発として書いたのだが、編集者から連載で行きましょう、と言われ、ずるずる書いていったら「岳物語」という一冊になり、それが「続 岳物語」に続き、以来、断続的ながらずっとシリーズのようになっていった。この本は、あるとき、ぼくが書いた岳少年の頃に、ぼく自身はどこで何をして、何をどう思っていたかが気になり書き出したのである。最後に自分自身にブーメランのように私小説が戻ってきたという感じだ。

 なお、この本には「続 家族のあしあと」(2020年10月)があります。
 「家族のあしあと」を書き終えても話は四方八方にひろがり、そのままそれだけを本にしたのでは読者も腰の据わりが悪いのだろうな、ということに気がつき、その続編として書いたものだとのこと。
 いずれ文庫化されたなら、それも読んでみることにしよう。
(2020.11.28 読)

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