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   双葉文庫  533円+税
   2001年12月15日 第1刷
   2016年7月25日 第14刷発行

 北森作品を読むのは、「親不孝通りディテクティブ」「親不孝通りラプソディー」に次いで3作目です。
 年老いた俳人・片岡草魚が、自分の部屋でひっそりと死んだ。その窓辺に咲いた季節はずれの桜が、さらなる事件の真相を語る表題作をはじめ、気の利いたビアバー「香菜里屋」のマスター・工藤が、謎と人生の悲哀を解き明かす全6編の連作ミステリー。第52回日本推理作家協会賞短編および連作短編集部門受賞作。(カバー背表紙から)

 文芸評論家・郷原宏による「解説」を参考にしながら全6編を概説すると、以下のとおりです。
 第1話の表題作「花の下にて春死なむ」では、この連作が、事件と登場人物が次第に多様化していく一種の安楽椅子探偵ものだという性格と方向を決定づけながら、フリーライター飯島七緒の視点から、急死した俳句仲間の隠された人生の軌道が語られていきます。
 第2話「家族写真」では、離婚歴のあるサラリーマン野田克弥の視点から、駅の貸本に挿まれていた家族写真にまつわる秘密が語られます。
 第3話「終の棲家」では、多摩川の河川敷の小屋に棲む老夫婦の写真を撮り続けたカメラマン妻木信彦の視点から、写真展のポスターが何者かに盗まれるという怪事件の顛末が語られます。
 第4話「殺人者の赤い手」では、派遣プログラマー笹口ひずるの視点から、香菜里屋の近所で起きた殺人事件と「赤い手の魔人」という怪談騒ぎの謎が語られます。
 第5話「七皿は多すぎる」では、古参メンバー東山朋生の視点から、回転寿司屋で鮪ばかり7皿も食べた男の謎が語られます。
 第6話「魚の交わり」では、飯島七緒の視点から、第1話の俳人の過去にまつわるもう一つの秘密が語られます。

 著者の北森鴻は、骨董や民俗学、料理や酒、明治初期の歴史などの分野を得意とする1961年生まれの推理作家でしたが、2010年、山口市内の病院で心不全のため48歳の若さで死去しています。
(2022.10.24 読)

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