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   河出文庫  680円+税
   2010年6月20日 第1刷発行

 自分にとっては宮脇モノの9冊目。
 北は根室本線の根室から、南は指宿枕崎線の枕崎まで、25の終着駅を訪れる“行き止まり”鉄道紀行です。国鉄全線を完乗し、最長片道切符の旅を敢行し、そしてこんどは終着駅へ……というように、宮脇俊三の鉄道に対する愛情は、徹底して乗り尽くす旅路にぎっしりと詰まっています。

 項立ての配列は北海道から九州へ。根室本線の根室、標津線の根室標津、士幌線の十勝三股、留萌本線の増毛、瀬棚腺の瀬棚、阿仁合線の比立内……と進んでいきます。士幌線と瀬棚腺は全線が1987年、標津線は1989年、留萌本線の留萌-増毛間が2016年に廃止されていますが、どっこい阿仁合線は、JR廃止後の1986年からは秋田内陸縦貫鉄道秋田内陸線の一部として存続され、89年には比立内と旧角館線終点駅の松葉とつながって運行されています。

 掲載されているのは上記のほか、女川(石巻線)、熱塩(日中線)、間藤(足尾線)、海芝浦(鶴見線)、東赤谷(赤谷線)、別所温泉(上田交通別所線)、氷見(氷見線)、三国港(京福電気鉄道三国芦原線)、井川(大井川鉄道井川線)、武豊(武豊線)、谷汲(名古屋鉄道谷汲線)、伊勢奥津(名松線)、片町(片町線)、海部(牟岐線)、境港(境線)、仙崎(山陰本線)、門司港(鹿児島本線)、杉安(妻線)、枕崎 (指宿枕崎線)。
 調べてみたところ、このうち現在廃駅となっているのは少なくとも8駅ありました。

 この本、初出は1982年1月号から83年12月号にかけて月刊誌「旅」に「終着駅へ」の題で連載されたものであるとのこと。ということは、国鉄の分割民営化が行われたのが1987年であったことを思うと、ここに書かれている国鉄路線の状況はもとより、そのダイヤの組まれ方、寝台列車による旅の情景、駅の風情や車窓からの景色、乗客の様子などにいたるまでの様々なシーンは、民営化直前における日本各地の鉄道の模様を正確に今に伝える貴重な記録となっていると言えるのではないでしょうか。
 刊行から25年以上が経過し、本書で訪れた終着駅のいくつかが姿を消しました。終着駅へ至る車窓は、在りし日の昭和の記録でもあります。
(2022.10.30 読)

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