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   朝日文庫  520円+税
   1989年4月20日 第1刷
   2004年6月30日 第13刷発行

 自分にとっては、池波エッセイの9冊目。これが最後の1冊になりそうです。
 幼年期から今日までの、食べものにまつわる思い出を、時代小説の名手が自在に語る。生地・東京はもとより、仙台、伊豆、高松、湯布院など日本各地、さらにはフランス、ベルギー、インドネシアにまで筆を延ばし、各地の香りと味、人との出会いを、歴史余話も混じえつつ巧みに描く。ますます冴える池波節。(カバー背表紙から)――というもので、1984年11月に単行化されたものです。

 読んでいて楽しくなくはないけれども、40年ほど前に当時すでに熟年となっていた人物が書いたもののため、著者の立ち位置やものの考え方に関して漂う古色は隠しきれない印象があります。食に関する池波エッセイはだいぶ読ませてもらったので、このあたりで一区切り打ちたいと思います。

 「食卓のつぶやき」については、文庫なのですいすいといけるはずなのですが、著者の池波が様々な思いをもっておいしいと食べているものが、正直言ってそれほどおいしそうに感じられず、あまりはかどりません。
 書かれてから40年も経過すると、多様化した食糧事情により現在のほうが食の質も幅もぐんと広がっています。そのためか、誰それのつくったオムレツとか、朝に食べる炒飯や夜中のビーフ・ステーキとか言われても、どうもピンとこないのでした。

 池波の食卓エッセイはずいぶん読んできましたが、明治生まれの古い生き方をしている人物が一般的ではないやり方で高級だったりこだわったりしたものを食べている様子を追いつづけていても、だんだんとしょうがないようなことに思えてきました。つまりは飽きてきたわけなので、ここまでで池波エッセイはしばらく打ち止めにします。
(2022.11.4 読)

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