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2023.01.26
もっと秘境駅へ行こう! 牛山隆信

小学館文庫 533円+税
2003年8月1日 第1刷
2007年7月16日 第3刷発行
表紙写真は、北海道ちほく鉄道の薫別駅。板張りのプラットホームから少し離れてトタン板の剥がれた物置小屋のような待合室があるだけで、周りにはほかに何もないという。これが待合室?!
「駅」なのになぜ「秘境」!? 大反響の前作に続き、存在自体が不思議な「秘境駅」を求め、もっとディープに全国を駆けめぐる爆笑の第2弾。日本で一番海に近い駅でたそがれ、明治時代の駅舎でホッ、渓谷の絶景を独り占め、駅前の公衆温泉で一息……あなたにもできる、バカバカしくも、贅沢な旅がここにある!(カバー背表紙から)
――という、今年8月に読んだ「秘境駅へ行こう!」(小学館文庫、2001)の、文庫書下ろしの続編です。
第1章は「海へと続く駅」。
予讃線の下灘駅が「海から近い駅」として有名ですが、ここでは秘境度という観点からその隣の串駅が紹介されています。去年4月に鉄道事業が廃止されバス転換された日高本線の大狩部駅や、撮影の名スポットとして知られる五能線最強の秘境駅である驫木駅、2022年12月の大雪で車の立ち往生が発生した地点近くの信越本線青海川駅も、ここに取り上げられていました。
第4章「古い駅舎が歴史を語る駅」では、山陰本線特牛(こっとい)駅も、「古い列車と古い駅をセットで味わう小旅行」として取り上げられていました。ここも、2019年の北陸・山陰方面への車旅の際にわざわざ訪ねたところです。
第5章「駅が「秘境」になるまでの物語」には、奥羽本線の大滝駅(山形県)が載っていました。山形・秋田県境に近い及位駅の一つ手前らしいのですが、山形県に住んでいながらその駅の存在を知らないでいました。1912年に信号所として開設されたものの、その後林業の衰退で人々が離れ、1975年の集中豪雨で駅周辺の人家が埋まるということがあり、山形・秋田両新幹線の開業でこの地の列車交換機能も不要となって、秘境駅になったといいます。
第6章「「町から至近」の秘境駅」には、仙山線の八ツ森駅も。仮乗降場で、1年を通してまったく列車が停まらない、到達難易度の高い駅なのだそうです。
巻末には前作の「秘境駅へ行こう!」を読んだ原武史による「列車が停まらぬ駅がもつ「近代日本の記憶」」(「論座」2001年10月号掲載)が引用されています。
原はそこで、なぜ秘境駅に惹かれるのかということについて、「ただ、都会の雑踏を逃れて一人だけになりたいからとか、駅の周りに手つかずの自然が残っているからだけではないだろう。著者の動機を私なりに言い換えれば、そこには鉄道の黄金時代であった近代日本の「記憶」が、ひっそりと刻まれているからではないのか。……駅に残された一つ一つの「遺跡」に注意深く眼を向けることで、かつてその線が栄華を誇っていたころの風景に、著者の想像力は確実に届いている。……本書は単なるきわもの趣味の本ではない。ローカル線の廃止がますます進み、全国が新幹線や道路だらけになったときにこそ、本書の真の価値が明らかになるに違いない」と記しているのでした。
(2023.1.3 読)
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