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   朝日文庫  560円+税
   2011年5月30日 第1刷
   2011年6月10日 第2刷発行

 3日前に読み終えた上巻の続きです。こういうものならすいすいと読めます。
 年間目標(100冊以上読破)の達成を盤石のものとするためにも、年初の今のうちにどんどん読んで冊数稼ぎをしておこうという魂胆です。

 父親の転勤で、東京から岩手の古民家に引っ越した一家が、生活や家族の問題でギクシャクするものの、座敷わらしの存在に気付き、家族の絆を取り戻すという物語。
 2007年に朝日新聞夕刊に連載され、翌年朝日新聞出版から単行化、2011年に文庫化されたもので、2012年には「ここにいるよ ざしきわらし」の題で絵本化もされ、さらに「HOME 愛しの座敷わらし」の題で映画化されたようです。

 文庫本の解説を、映画で高橋家の父・晃一役を演じた水谷豊が書いています。いい解説になっていて、その一部を拾うと、次のとおりです。
 「荻原浩さんのキャラクター作りは実に巧みで、僕はこの本を読んでいる間中、常に登場する誰かになっていた。それは晃一に限らずどの登場人物も演じられるほどで、なんだったら、はるさん(米子の姉)や米子さん(隣家のオバアさん)役でもやれるくらいなのだ」
 「(晃一が)あの民芸館のような一軒家を選んだのも、もう一度しっかりと家族に向き合おうという計画があってのことだ。しかし晃一が実際に取った行動といえば、家屋の不具合に対するゴマカシばかりだ。反対されることを見越して家族にはロクに家の欠点を伝えず、事後承諾的にいきなり連れてきてしまう……そんな晃一のやり口に、僕は健気さすら感じてしまう。」
 「この小説には一貫して温かいユーモアが流れている。そして言葉にできない「空気」みたいなものをうまく言葉にしている。そのためか、行間から滲み出るような、温かいムードがあるのだ」
 「きっと絆というものは、家族だからといって自然に発生するものではないのだろう。ましてや「作ろう」と頑張ったところで作れるものではない。家族という間柄でも人間同士として認め合い、何があっても受け止める関係を築くこと、そしてそれを積み重ねることでしか生まれないのではないだろうか」

 そして、田舎から戻った都会で入った、見慣れたファミリーレストラン。それは感動的な最後の場面でしたが、果たして映画版でのラストシーンはどのように描かれていたのでしょうか。そう考えると、ぜひ映画のほうも観てみたくなるのでした。
(2023.1.11 読)

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