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   集英社文庫  619円+税
   2011年3月25日 第1刷発行

 タマキングの5冊目。彼は自分の大好きなことを書いていて、それは東南アジアの仏像だったりウミウシだったりするのですが、今作はジェットコースターです。
 東に凄いコースターがあれば行って乗り、西に珍しいマシンがあればそれも乗り、南に怖がっている人があれば行って乗せ、北につまらないマシンがあればそれも乗り……。ジェットコースターに深い愛情を捧げる著者が世界の100機種以上に乗って乗って乗りまくった、最高に爽快な暴走エッセイ! 濃すぎるマニア仲間との座談会「好きなマシン、乗りたいコースター、言いたい放題」も収録。(カバー背表紙から)

 一人で乗ってはつまらないので、ウェブで見つけたジェットコースターマニアの西島君という高校3年生を同行者にして、コースター大国のアメリカまで出向いて乗りまくっています。ホントに好きなのでしょう、何かのついでというならまだしも、ジェットコースターに乗るだけのためにわざわざアメリカまで出かける酔狂さは自分にはありません。

 人はなぜジェットコースターに乗るのかを著者なりに考察しているところがあり、それによれば大きく3つの動機というか段階があり、それは1 下心、2 うりゃうりゃ、3 個性を味わう――だと語っています。うりゃうりゃ?! これだけではすんなりと理解することは不可能で、後に続くそれぞれの解説部分を読まなけばならないのですが、その内容がまた面白いのなんの。
 知識として身につけたとしてもそれほど価値がないと思われるジェットコースター話が続いていきますが、中にはタマキングらしい論調に思わず無邪気に笑えてしまう場面が何度かやってきます。まったく何言ってんだよ、馬鹿だなあコイツは――なんて思いながら読めるので、精神衛生上大変にヨロシイ。

 著者は「アメリカ2001」の章で、この2年間で109のコースターにのべ200回以上乗り、途中から人生におけるジェットコースター含有率が限界値を超えてついにアレルギーになったと述べています。いくらフリークといっても限度があり、ジェットコースターはそれに乗るのが非日常的な体験だからいいのだと感じていたようです。
 とはいっても好きは好き。ジェットコースターの世界が新しい段階に突入しつつあることを知り、2007年にはまたもや北米に飛び、新機種に乗って異次元体験をしているのでした。

 巻末の、著者と4人の愛好者が語る座談会「好きなマシン、乗りたいコースター、言いたい放題」は、かなりマニアック。どんなジャンルにもその道の熱狂者とはいるものなのだなと感心する次第です。(笑)
(2023.1.11 読)

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