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2023.03.22
ヤポネシアちゃんぷるー 吉村喜彦、垂見健吾

アスキー 1900円+税
1998年4月8日 第1刷発行
混じり合えば、みんな、おいしい。
何千年も前にはじまった人々の交流がまた復活し、来る者、行く者、戻る者で、今この島々は人の往来に沸き立っている。その具体的な例をぼくたちはこの本に見ることができる。在日外国人、移民二世、沖縄人……新たなる日本人像を探る渾身のルポ。(「BOOK」データベースほかより)
このところ吉村喜彦のビール会社営業マンの奮闘と成長を描く青春小説シリーズを読んでいて、吉村喜彦ってたしか、沖縄モノもいろいろ書いていたよナと思い当たり、未読のものをと古書店から100円で買ったもの。厚手紙の単行本なので、デスクの上に置き文鎮で両脇を固定して読みました。
「混じり合う「日本人」を訪ねて」という副題が付いています。表紙には若かりし古謝美佐子が三線を抱えてにっこり笑っている姿があったし、ヤポネシアという島尾敏雄の造語と沖縄のちゃんぷるーで表題が構成されているので、これは沖縄本デアルと思って購入しました。しかし内容は、著者の吉村と南方写真師の垂水健吾が沖縄のみならず本土の各地やハワイなどの外国で活躍する魅力ある人物を取材に行く趣向のもので、主たる登場人物24人のうち沖縄関係者は、大阪在住の大島保克とニューヨークで活躍するアイコ・ナカソネを含めて8記事(ほかにブラジル食堂、本間智俊、内間豊三、パスティス・タカラ、崎元酒造、古謝美佐子)になるようでした。でもまあ、問題はありません。
はじめの部分では、名護で沖縄そば屋を営むブラジル帰りの山下千恵さんらや、鳩間島で漁師見習いをしている本間智俊君などが登場します。
四半世紀も前の書籍なので、今となっては当時営業していた店が閉店していたり、中には語っていた本人がすでに死亡していたりします。タルケンの写真が多く使われていて、ビジュアル感覚で読めるため、ページの消化スピードは速いです。
ニューヨークでミュージカル女優として活躍しているアイコ・ナカソネも、ホノルル生まれの沖縄移民の子で、沖縄古典舞踊の第一人者・真境名由康は母方の祖父に当たるのでした。当時30歳でしたから、今生きているとすれば55歳ぐらいでしょうか。ググっても芳しい情報は得られませんでしたが、今はどうしているのでしょう。
大阪をベースに活躍していた29歳時の大島保克も取り上げられていましたが、彼の活動もぱったりと止まっているようです。いい唄者だったのになぁ。四半世紀という時間はそれほどに状況を変えてしまうものなのかもしれません。
池澤夏樹が「あとがき」を書いています。
彼は、「人の中には、境界を閉ざそうとする国の力に逆らって散っていきたい、混ざり合いたいという気持ちがある。知らない土地で自分の暮らしかたを見つけたいという衝動がある。その気持ちが抑えきれなくなって、ある日、心を決めて郷里を後にする。あるいはこの島々にやってくる。長い目で見れば、そういう人の心の動き、移動を求める内なる強い欲求が、今ぼくたちが住んでいるこの社会をつくってきた」とし、近代の一時期にはとても閉鎖的だったこの国が最近になってずいぶん開かれ、いろいろな国の人がやってきて、何かをもたらし、住み着き、ここを変えていることが、今の日本列島すなわちヤポネシアの元気な姿につながっているとまとめていました。
(2023.2.16読)
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