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2023.03.24
この国のかたち一 司馬遼太郎

文春文庫 476円+税
1993年9月10日 第1刷
2003年2月15日 第24刷発行
日本は世界の他の国とくらべて特殊な国であるとはおもわないが、多少、言葉を多くして説明の要る国だとおもっている。――長年の間、日本の歴史からテーマを掘り起こし、香り高く稔り豊かな作品群を書き続けてきた著者が、この国の成り立ちについて研ぎ澄まれた知性と深く緻密な考察をもとに、明快な論理で解きあかす白眉の日本人論。(カバー背表紙から)
――という、自分にとって期待度の大きい全6巻の第1冊目です。雑誌「文藝春秋」の巻頭随筆として書かれたものをまとめたもので、1冊目は1986~87年に掲載されたものです。「街道をゆく」シリーズの文庫本と違ってぐっと活字が大きくなっているので、案外すぐに読めてしまうかもしれません。「街道をゆく」は43文字×18行ほどの体裁でしたが、こちらは35文字×13行となっていて、1ページのマス目に換算すればおよそ1.7対1となっています。これならページは捗るわけです。
はじめの部分では、日露戦争の勝利が日本国と日本人を調子狂いにさせ、太平洋戦争が終結するまでの40年間は日本の“異胎の時代”だったと述べ、日本陸軍の機密文書の記述を例に挙げて、憲法以下のあらゆる法律とは無縁と解説された「統帥権」について、思いを馳せています。
薩摩における「テゲ(大概)」に関する論考は興味深いものがありました。
テゲとは、上の者は大方針のあらましを言うだけで配下の者にこまごまとした指図はしないことを言うようなのですが、これを戊辰戦争時の西郷隆盛、日露戦争の野戦軍を指揮した大山巌、連合艦隊を統率した東郷平八郎を例に挙げて説明しており、なるほどと膝を打ちたくなるような名解説になっていました。
司馬の語り口が軽快で、現代の“昔話”として聴いているような気分になれ、並行して読んでいる宮本常一の「周防大島昔話集」よりも、ずっと面白く読めます。このようなことを夜話として聴かされたなら、聴くほどに目が冴えてしまいそうです。いいシリーズものに出会えたと思います。
(2023.2.19 読)
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