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   講談社現代新書  740円+税
   2011年3月20日 第1刷発行

 消えた駅弁、東大合格上位校と鉄道の意外な関係、うなぎ弁当食べ歩き、時刻表旅行のススメ……。線路の彼方に孤高の“鉄”学者は何を見たか? どこから読んでも愉しめる、待望のシリーズ第3弾! 爆笑必至の「日本の廃線シンポジウム」も収録。(コシマキ等から)――といったもの。
 講談社のPR誌「本」の1996年1月号から始まった連載は、2011年まで15年間、180回も続いたと記されています。

 ショートコラム45本が、各項4ページほどにまとめられ、キレのよい文章で並んでいます。
 第4章からの「鉄道から読む・鉄道で遊ぶ」「文化としての鉄道」「私鉄沿線文化論」では、同書の第1、2章あたりに多く見られた“鉄道・天皇論”のような著者の専門的な記述部分が少なくなり、単なるマニアとは違うんだぞという自負に基づきながらも(笑)、斜に構えたような位置取りから万人受けするであろう鉄道論を展開しています。そんなところがこの本のいいところ。個人的には、ひとつばなし三部作中では肩の力が抜けている最もいいデキのものだと思いつつ、最終章の「日本の廃線シンポジウム」までストレスなく楽しく読むことができました。

 著者は「あとがき」で、鉄道はアメリカも日本も、20世紀の前半まではよく似た発達の仕方をたどったものの、その後アメリカがモータリゼーションの進展とともに鉄道が衰退していったのに対し、日本では廃止されたのは路面電車やローカル線だけで、大都市の鉄道網はますます拡張され、とりわけ私鉄は、分譲住宅地をつくり、歌劇場や野球場、デパートやスーパーをつくることで、沿線住民のライフスタイルを規定した、としています。
 そして、同じ間取りの団地も、乗客全員にスシ詰めの通勤を強いる鉄道も、双方が社会主義的であったとしながら、近時は団地や鉄道が社会主義と結びつく時代は終わり、首都圏でも大阪圏でもピーク時の混雑率が200%を切り、鉄道輸送は量から質の時代に入りつつあると分析しています。つまり、国鉄=昭和の「社会主義」が、JR=平成の「資本主義」にすっかりとって代わったといいたかったようです。
 さらに、15年もの間続いた「鉄道ひとつばなし」の連載とは、鉄道にまつわる様々な記憶をゆっくりと反芻するなかから生まれたもので、その記憶は同時代を生きてきた人々と共振するものだと書いています。当方もまさに、この著作に共振した一人となったのでした。

 これでひとつばなし三部作、完読となりました。

(2023.10.24 読)

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